木村百花 interview

地元、北海道で公務員として1年間働いたあと、2019年に中途入社。「TOHOシネマズ名古屋ベイシティ」「TOHOシネマズ梅田」での勤務経験を経て、4年目の現在は「TOHOシネマズモレラ岐阜」でストアを担当している。

「愛される劇場」をつくる人になる

入社2年で都心部の大劇場で人気アニメ作品のグッズ売り場を担当した木村。大きなプロジェクトを成功させた影には、最初に配属された劇場で担当した閉館の経験と、そこで感じたお客様とスタッフのGOOD MEMORIESがあった。

入社2年で人気アニメ映画のグッズ売り場を自ら企画

新卒のときは安定を求めて公務員の事務職として就職したのですが、本来の自分は人を楽しませることが好きな性格。映画館で働くことにも以前から憧れがあり、1年働いたあとに思い切って転職にチャレンジしました。今は、表に出て人と話したり、裏に回って事務仕事をしたり、いろんな仕事に巻き込まれながら気づいたら1日が終わっている、という変化に富んだ働き方ですが、単調な仕事よりもこのほうが向いていたな、と思っています。映画館には飲食、小売、教育、接客といろいろな要素がありますが、覚えることが多い分、将来に向けての目標を持つことができるのもよいところですね。貪欲に物事を覚えようという姿勢が評価してもらえるのも感じます。

これまでの仕事で印象に残っていることの一つが、梅田で経験した人気アニメ映画『劇場版 呪術廻戦 0』の公開準備と最速上映です。そもそも梅田は都心部の劇場ということもあり、毎日が繁忙期のような忙しさ。さらにこのときは販売を待つグッズの量も桁違いで、これをどう買っていただくかを考えるのがストア担当だった私の大きな役割でした。「お客様が思わず買いたくなっちゃうような売り場にしたい」と他担当のマネージャーやスタッフたちと話し合って決めたのは、アイテム別に届いたグッズをすべてキャラクター別に並べ替えて売るという方法。通常の販売スペースではとても足りず、マニュアルに収まり切らない判断も必要でしたが、人気キャラクターを目につくところに置いたり、お客様が1カ所に滞留しないようポップを立てるなど、自分がつくりたい売り場を明確にしたうえで周囲と交渉しながら進めていく仕事にはとてもやりがいがありました。

準備が完了したときにはまるで学園祭の前夜のような高揚感でいっぱいでした。公開当日は、午前0時に3スクリーンで同時上映ということで一気に1700人のお客様が訪れる中、迎えるアルバイトスタッフが必死にレジを打つ様子を「頑張れ頑張れ」と見守り、狙い通りにグッズが売れて、スタッフも「いい思い出になった」と言ってくれたときには、「大変だったけどやってよかった」と思いました。

閉館を通じて感じたお客様とスタッフのGOOD MEMORIES

入社して初めての配属先は名古屋ベイシティだったのですが、そこで閉館を経験しているんです。最初は、せっかく配属された先が閉館になるのは寂しく、さらに自分はどういう行動を取ればよいのか、劇場の雰囲気はどうなるのかと戸惑うばかりでしたが、考えてみれば、新館立ち上げなどと違い、自分から志願してできる経験ではない貴重な機会であるのも事実。途中で「めったにない業務自体をポジティブに捉えて取り組まなければもったいない!」と気持ちを切り替え、「お客様にはとにかくよい接客を受け、いい気分で終わってほしい」という思いで、私たちも楽しく働くことを意識して臨みました。

そんな中で経験したのが、劇場が愛されていたことを感じるいくつもの出来事でした。常連さんから手紙をいただいたり、「お疲れ様でした」とプレゼントをいただいたことも。20年近く勤務したスタッフに「ずっと通っていました」と挨拶があったという話も聞きました。またそんなスタッフ自身が「こんな私を育ててくれた」と劇場への感謝を語り、「いろんな人を受け入れてくれて、みんなで一緒に働く場所だった」と振り返るのを聞いていて、私もこれからこんなふうに、多様な人に愛される劇場、職場をつくっていかなければ、という使命感を抱いたのです。

目指すは何でも語れる人!次の目標は新劇場立ち上げ

現在働いているモレラ岐阜へは着任してまだ1カ月足らず。劇場リニューアルを担当し、ドリンクバーの設置や新しいコーヒーサーバーの導入、什器の配置の変更などさまざまな業務に取り組んでいます。

大劇場と比べるとトラブルの数は少ないのですが、その分緊急事態に慣れていない社員もいます。梅田では多忙でしたが、慣れない中で周りのスタッフや上司、同僚がみな親切に面倒を見てくれて、孤独になったり、変に困ったりすることもなく多くのことを学ぶことができました。そうして得たものを、今度は自分が教える側として伝えていければと思っています。

今まで、閉館、大劇場と経験し、「経験すれば自信を持って人に語れる」ということも実感できました。そんな経験を一つずつ積み重ねていくためにも、次はここでリニューアルにしっかり取り組み、次のステップとして新劇場の立ち上げに挑戦したいですね。ちょうど現在、地元でもある北海道の札幌で新劇場のプロジェクトが進んでいます。できれば社内FA制度でそのオープニングマネージャーに立候補し、地元の劇場を成功させ、その経験をさらに全国の劇場に還元できる人になりたいです。そのためにも今は、できる仕事の幅を広げていきたいですね。

人との関わりを大切にしながら映画を提供する

新山沙樹

お客様とスタッフがいる場所が仕事の現場

兼子隆生