育てたいのは「話しかけやすい上司」

TOHOシネマズには新入社員向けを中心とする、社員研修に特化した部門が存在する。新入社員が多様なアルバイトスタッフを統率出来る劇場マネージャーになれる様、育成・研修に取組む藤田貴徳の考えを聞いてみた。

藤田貴徳
「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」立ち上げを含め5カ所で劇場勤務を経験(うち3つでは支配人)。その後スーパーバイザーとして7年間で18店舗を担当したのち、2015年10月より劇場運営部運営研修室室長に。新人研修のプログラム考案者でもある。

新人研修は「部下になる人の気持ちを知る」ことから

私が所属する運営研修室では、専属のトレーナーが2か月間にわたる新入社員研修を行っています。新入社員研修では、2カ月のうち前半の1カ月を使って、劇場の現場でアルバイトスタッフと同じ業務を経験してもらいます。現場の仕事を覚えることも目的の一つですが、それ以上に重要視しているのは「これから部下になる人たち(=アルバイトスタッフ)が何に喜びを覚えるのかを知る」ことです。

長らくスーパーバイザーとして現場を離れていた自分は、研修プログラムを作るために、4カ月間、劇場でスタッフの仕事を改めて体験してみました。その経験を通じて感じたのが、「現場に立つ人の気持ちを理解するには、自分がやってみるのが一番」ということ。それでこのような研修が生まれました。

新入社員研修の後半の1カ月は、マネージャーとしての仕事を学びますが、ここで大切にしているのは研修期間だけで一人前になるのを目指さないこと。マネージャーの業務をすべて挙げれば膨大な量になるので、すべてを覚えるのは到底無理。研修を受ける側は、つい上映トラブルやクレームなど問題発生時の対応方法が気になってしまいますが、それらはあくまでイレギュラーなできごとで、起こる可能性の低いものです。それよりも日々必要となる売上管理の方法や、お客様にGOOD MEMORIESを提供することに繋がる行動を身に付けていれば、配属先で即戦力になることができる。新人マネージャーを助けると同時に、劇場の負担を減らすためにも、そうしたメリハリのある、劣後順位を意識した研修を行っています。

目の前のスタッフに興味を持てる人になってほしい

マネージャーに必要なマインドセットとは、自分たちは会社全体で目標に向かっていく集団だということを理解し、役割分担を意識できることです。ではマネージャーとしての役割とは何か。それは接客ではありません。接客をするのはアルバイトスタッフ。そのアルバイトスタッフがどうすれば気持ちよく接客できるのかを考え、環境を整えることこそがマネージャーの役割なのです。お客様にGOOD MEMORIESを提供していくための方法は、スタッフ達と一緒に考えていけば良いですし、彼らが迷った時に正しい判断が下せる「ものさし」さえもっていればよいのです。

最も重要なのはコミュニケーション力。でも、人と人との関係ですから難しいシチュエーションもあります。たとえば、研修期間中に「このスタッフの笑顔が少し弱い」という声が新人マネージャーから上がってきたら、「そのスタッフの名前は?そのスタッフの良いところはどんなところ?」と聞いて再度そのスタッフの様子を見にいかせます。すると、だんだんその人のことがわかってきて、自分自身からそのスタッフにどうアプローチしていけばよいかヒントが見えてくるのです。また、新人マネージャーでも「笑顔が弱い」と感じるということは、お客様も同じように感じているということ。それを機に改善に繋げるだけでなく、改善するための方法を身に付けるチャンスとなるはずです。

マネージャーが目の前にいるスタッフに興味を持って行動し、スタッフ自身がTOHOシネマズで働くことでGOOD MEMORIESを感じてもらえることこそが、お客様にGOOD MEMORIESを提供することに繋がっていくものと確信しています。

変化していくエンタメ業界で、どうあるべきか

これまでもそうでしたが、これからも劇場に求められるものはすごいスピードで変わっていくことでしょう。IT化はますます進むでしょうし、それに伴い、劇場従業員に求められるものも変わっていくはずです。エンタメ業界は、新たなビジネスが突然生まれるかもしれない業界です。それがチャンスでもあり面白いところでもあるのです。

研修室の役割は、そういった変化に順応できる人を育てていくこと。試行錯誤ではありますが、重荷を背負っているという感じはありません。私たち自身も変化しつづけていますし、変化に順応できなければいけないと思っています。

言ってみれば未完成でもよいのです。未完成であることを知ってさえいれば、わからないことは素直に人に聞くことができ、成長することができる。それができないと成長は止まってしまうのです。これから入社される皆さんには、日々前向きに業務に取り組み、自身の成長の歩みを止めないマネージャーをぜひ目指して頂きたいと思います。