平松義斗の「創新」。
異業種と組んで未知のサービスを生む。

業界初、映画のチケット代を携帯通話料と同時決済できる仕組みを考えた平松義斗。その発想の原点はどこにあったのか?提携先はなぜ動いてくれたのか。「未知のサービス」が生まれるまでの軌跡を追う。

平松義斗
キャリアのスタートは劇場アルバイト。その後副支配人として数値や人の管理、外部との折衝を経験し、営業本部マーケティング部マーケティング室に異動して10年。

「変だよ?」妻のひと言で気づいた、チケット購入のハードルとは?

私の仕事は、「いかに選ばれる映画館になるか」という視点で施策を考えること。異業種の力を借りて新しいサービスを創ることもその一つだと考えています。そのような発想から手掛けたプロジェクトの一つが、映画のチケットを携帯電話の利用料と一緒に決済できる仕組みづくりでした。

きっかけは、私自身が満員電車の中で、 携帯電話からチケットを予約しようと試みたときのこと。必要事項を入力し、最後に決済情報を入力しようと財布からクレジットカードを取り出すと、それを見ていた妻が「電車の中でクレジットカードを取り出す人なんていない」と言い出したのです。確かに電車内でクレジットカードを出すのは不用心だし不便でもある。携帯電話を使った通信がこんなに普及しているのに、今のままでは移動中のチケット予約にはこんなハードルがあるのかと気づいた瞬間でした。

外出先でクレジットカードを使わずに決済できるようにしたい。ハードルを上げないためには、会員登録なども不要なほうがいい。何かよい方法はないものかと考えたとき、思いついたのが、当時ドコモさんが携帯ゲーム利用者向けに提供していた、利用料が通話料と一緒に請求される決済サービスでした。このサービスと提携することで、チケット購入者が外出先でクレジットカードを取り出す必要がなくなったのはもちろん、クレジットカードを持っていない高校生にまでチケット販売のすそ野を拡大できたのです。その後、auさんやソフトバンクさんとも提携が実現しましたが、当時、日本初の試みでした。

+αをどう作るか?劇場勤務時代のイベント企画が原点

学生時代に劇場でアルバイトをしていて、社員になってからも2年ほど、劇場経営の仕事をしていました。このときも、よく近隣にある競合の映画館との差別化を考えていたのですが、映画館の差別化というのは難しいんですよね。同じ作品を他で見ることもできるし、値段も同じ、清潔さやサービスのよさも、今はどの映画館でも当然のように備わっています。

そこで+αの何かを考えようと、イベントを企画したんです。たとえば「スウィングガールズ」の上映中には、地元の高校の吹奏楽部の生徒たちを呼んで演奏会をしてもらいました。こういうイベントがあると、「せっかく映画を観に行くならイベントのある方へ」と考えていただけるんですよね。この頃の経験が、その後の自分の基礎となっている気がします。

先入観を捨てて異業種と組む。そこに新たな価値が生まれる

異業種にコラボレーションを持ちかけるとき、先入観を持ってはいけません。業態が全く異なる大企業とのコラボレーションに親和性が本当にあるのか?話は聞いてもらえるのか?と考えてしまいがち。しかし先方にとってもメリットがあれば協力はしてもらえるものです。ドコモさんのときも、最終的には私たちのサービス向けに柔軟なアレンジをしていただき、より利用しやすいサービスにしていただくことができました。

映画人口を広げていくのは、もはや業界だけでは難しいと感じます。異業種と組めば、そのサービスによって他の映画館との差別化ができるだけでなく、その企業の利用客を映画側に引き込むことも可能です。最近はヤフーさんとの提携も実現。ヤフーさんはインターネットサービスでは最大手ですが、リアルに人が集まる実店舗を持っていません。これに対してTOHOシネマズには、劇場というリアルな空間を持っている。こうして、違う強みを持つ異業種同士が組むことで、今後もよりよいサービスを拡大しつつ、利用者数を増やすことで映画人口が増やせればと思っています。