自らの決断で大きな利益を作る

決して派手な超大作では無い、あるドラマ作品で大成功を収めたのは、自称「映画には詳しくない」支配人。スケジュール一つで何百万円もの差が出る売上、日々入れ替わるアルバイトスタッフ……都心の大規模劇場で支配人を務める意味とは?

青島圭太
大学時代に「TOHOシネマズ府中」でアルバイトスタッフを経験。社員がやりがいを持って働く姿に感銘を受け、社内公募試験を受けて正社員となる。マネージャーとして3館、副支配人として2館、支配人として1館の経験を経て、2016年10月より「TOHOシネマズ日本橋」支配人。

異動で多くの支配人と出会い、多様な価値観を学んだ

実は私自身は昔からほとんど映画を観ていませんでした。そんな私が今の仕事に就いたのは、学生時代のアルバイトがきっかけでした。ちょうど劇場ができたばかりで、「オープニングスタッフ」というのをやってみたかったんです(笑)。人を入場させるだけのラクな仕事だと思っていたら、やることはいっぱいあるし、映画を観ない自分にとっては、「こんなに多くの人が観に来るのか」ということも驚きでした。

そのまま就職を決めたのは、社員の皆さんがアルバイトスタッフをまとめ、盛り上げる求心力に憧れ、何でもラクな方に逃げがちな自分も、怠けることなく刺激的に働けそうだと思ったからでした。

入社後は、マネージャーとして3劇場、副支配人として2劇場を経験し、岡山県の岡南に支配人として着任。その後、日本橋へ異動となりました。異動するたびに劇場規模が大きくなるか、あるいは仕事のランクが上がり、常にモチベーションをもって臨むことができました。

また、何人もの支配人と仕事をすることで、幅広い価値観を身につけることができました。お客様にとことん寄り添うことを教えてくれた人もいれば、会社の考えを理解し、経営者として考えることを教えてくれた人も。お客様に寄り添いたいばかりに、できない約束をしてしまったときには「甘い」と叱られたこともありましたが、それもとても大事な勉強だったと思います。

自身で組んだ上映スケジュールがハマった時の達成感。

初めて支配人を務めた岡南では、ちょうどMX4D導入のタイミングで、試写会を開いたり取材を受けたり、メディアを中心とした外部の人と接する機会が多く、とても刺激的な経験をしました。しかし今いる日本橋での仕事はまた別物。岡南の倍の集客規模を持つ大型劇場だけに、とくにどの作品をどんな時間帯に上映するかというスケジュールの組み方が非常に大事なのです。少し間違えるだけでお客様の入り方が全く変わり、何百万円ものロスになってしまう。その代わり、成功したときのリターンの大きさも半端ではありません。

印象的だったのは、あるアメリカのドラマ作品の公開時のこと。派手な超大作ではなく、公開規模も大きな作品ではありませんでしたが、それでも何となく「これは入る」と直感して、404席の最大キャパシティのスクリーンで上映することを決断。すると、公開2日目のサービスデイにはみごと満席になったんです!

アカデミー賞で話題になったこと、女性が活躍する映画で予告編もカッコよく、レディースデイでの集客が見込めることなど、決断には自分なりの理由がありました。でも、同じ都心部の新宿や六本木では100~200席程度の比較的小規模のスクリーンで上映すると聞いて不安になり六本木の支配人にこっそり電話して「やっぱり難しいでしょうか?」なんて聞いたことも。今だから言える笑い話です。

自ら決断し、成功した高揚感は支配人にしか味わえない

これまでいろいろな仕事を経験しましたが、何といっても支配人の仕事が一番楽しいです。自分の判断で決められる範囲が広くなり、起こることすべてが自分の責任である代わりに、うまくいったときは高揚感も格別。「仕事をしている」という実感があるんです。
とくに日本橋という東京都心の劇場は、ここでの成功が会社全体の成功に直結する重要な劇場。その中で、どうレベルを上げていくか? スクリーンや立地が変えられない中、来たお客様に喜んでもらうためには「人」しかありません。規模が大きい分、スタッフの入れ替わりも多い日本橋。岡南ではアルバイトスタッフも主婦やフリーターが多く、長く働いている人もいましたが、ここではアルバイトだけで120人のスタッフがいて、そのうち半数以上が入社1年未満という人たちです。その人たちをどう率いるのか?チームワークだけではダメで、個々の成長も必要だとは思うが、それをどう伝えていくのか?課題だらけですが、今はまず、一番楽しそうなのが私自身でありたいと思っています。

目標はこの日本橋を、全国の手本となるような劇場にすること。そしてその先は、新しい劇場のオープニング支配人として、1から劇場をつくる仕事にも挑戦してみたいですね。